「神の一手」【ネタバレ&暴力表現あり】

※※この記事には本作と次作「鬼手」のネタバレと、暴力的なシーンの記載も含まれます※※


 賭け事マジでやめろ。


 次作の「鬼手」は新宿シネマートで観たんだけど、一作目のこれは観たことがなく、ちょうどAmazon primeで無料配信されていたので観た。話の内容は鬼手とだいたい同じで香港映画みたいな展開。家族が殺された復讐で囲碁を鍛えて囲碁で仇を倒す。囲碁に肉弾戦はつきもの、わかるね?

 結構暴力シーンが容赦なくて、韓国映画伝統の近接戦闘(なぜか絶対銃を使わない)のほか、指折り、碁石による目潰し、強制的な異食と、サクッと殺害より拷問がかなり多い。なかでもこの異食が本当にキツい。賭け囲碁に負け、ヤクザに目を潰された兄が、「全部食べれば弟の命を助けてやる」と言われ、地面に落ちた碁石を血まみれで這いつくばって探し、拾っては口に入れ飲み込み続ける。なんでこんな酷いこと思いつくんですか?(関係ないけど「新しき世界」でも初っ端生コン飲まされてて、か、韓国ヤクザ怖え〜……と思った。)

 囲碁のシーンは囲碁ルール知らなくても問題なし。今有利か不利かは登場人物が勝手に喋ってくれるのと、専門的な知識が必要になる部分はまずない。「負けたほうは舌切ったりするんだなあ」とか「マイナス36度の冷凍倉庫の中で囲碁するんだなあ」とか、そんなことがわかってればいいです。これ囲碁に命賭ける必要あります?という感じだけど、カードバトルが言語の遊戯王と同じで囲碁が言語なので疑問に思ってる時間が損。あと警察も存在しません。世界観に没頭しよう!

 でもさ〜。面白いんだけどさ。

 話でちょっと不満だったのが二つあって。「敵が自分で考えて碁を打たないこと」と、「決着がつく前に肉弾戦に移行すること」。

 水谷豊に激似の敵の親玉がずっとイカサマ(盤面を隠しカメラで撮影、別室に控えている天才棋士に手を考えさせて、耳に仕込んだイヤホンでそれを聞いて打つ)で囲碁をしていたのがとにかくがっかりだった。もちろんそれにはきちんと伏線が張られていて、最後はその結果身を滅ぼすことになるので、本当に「そういうストーリー」なんだけども。「鬼手」では一対一の真剣勝負を繰り広げていたので、それを見た後だとすっきりしない。

 そして冷凍倉庫での囲碁で、最初黙々とやってるんだけど髪も凍ってそろそろ死んじゃうよ〜ってときに、いや殺したほうが早くね?と殴りかかったのも残念だった。まあそうなんだけど。敵の親玉との最終戦も、主人公が「石が全滅するまでやる」と執念を見せたのに、敵がさっさとナイフ抜いちゃったのもああ〜って。まあ親玉にとっては囲碁は金を稼ぐ手段でしかない、ということなんだろう。ここも、ちゃんと決着つけてから、「でも納得いかねえ!!」と肉弾戦に移行した「鬼手」と比べてしまった。肉弾戦はあくまでついた決着をひっくり返す手でしかないんだ……。

 結局自分の中では次作の「鬼手」のほうが好みでした。硫酸噴出囲碁とか、鉄橋囲碁とか、囲碁百人組手とか、全部の戦いが男塾名物みたいで面白かったのもある。味方キャラクターは「神の一手」もよかったです。ジーザスとモクス、カッコいい。モクスがトンカチで暴れ回ったあとのオチがないのはエッと思ったが。あれ結局どうなったの?

 まあなんというか「神の一手」は全体的に「いやこれそもそもお兄ちゃんが賭け囲碁しなければこうはならなかったんじゃね?」という話であった。大事な身内とはきちんとコミュニケーションを取って未然に防ぐこと、そうでなければ怪しいと思った段階で距離をとりましょう、という啓発映画です。あと賭け事は基本負けるので、損切りできない人はやめましょう。大麻と仮想FXはゲートウェイドラッグです。正しい知識で正しい危機管理を!


 ご安全に!