「ROCA」

 言われてみれば「ののちゃん」に出ていた気がするキャラクター・吉川ロカの漫画。「ののちゃん」にしては異様にかわいい顔の登場人物なので、読んでいてなんとなく思い出した。

 最初は港町の商店街でのストリートライブからはじまり、才能を見出されたロカがファド歌手を目指して岡山を出たあとも、ロカを応援して守ってくれていたあぶない筋の同級生・美乃と連絡を取り合い、落ち込んだときはけっとばしてもらう。どんな小さなライブでも全力で歌うし、たった一組だけきたお客さんが実は大雨のなか来てくれたことに気づいてロカは雨の中駆け出し頭を下げる。

 そんな感じで努力しながらまあまあ都合のいい感じで評価され都合よく人気になっていくロカを見ながら、だんだん残りページが少なくなっていく中いったいこの漫画はどうやって終わるのかなあと思っていた。そして最後の最後、ロカが名誉ある賞にノミネートされ喜びの電話を実乃にしたところ……。ラストシーンを呼んだら前半高校生の二人が過ごしたあの頃は全部思い出になってもう戻ってこないんだ〜と思って、丸々一冊切ない本に様変わりしてしまった。

 でも結構こういう話好きです。ロカにとっても美乃にとってもあの瞬間はつらいものだろうけど、何年も経って、ベッドに入ってさあ寝ようというときその存在をふと思い出して、あたたかい気持ちになる。「会いたいのに会えない相手」はずーっと経てば、いつか自分の中で宝物みたいになって、たまに開けて眺めてみたりする。もう会えないんだけど。会えないから綺麗になる(まあでも、私はこんな目には遭いたくない。フィクションでこんなに切ないんだから、実際自分にそんなこと起こったら、引きずっちゃうし)。

 私がこの手の「切ない」に出会ったのはおおばやしみゆきの「エンジェル・ハント」が最初なんだけど、他にもなんかあったろうか。なんだかんだで最後会えちゃったりするからね。

 

 しかし驚いたのはいしいひさいちは今年で御年71歳とのこと。は〜長生きしてほしい。