苦い思い出

 以前、日本へ出張に来た中国人の社員が「春節は直前にならないとわからないんです」と言うので「政府が自由に決めているとか、そういうことでしょうか?」と聞くと「いや、計算で決めてますよ」と返され、「それなら事前にわかるもんじゃないんですか?」「……うーん」。

 検索したら来年の分もちゃんと出てきました。その人がたまたますごいアバウトだったのか、どうなのか……(中国国内からじゃ検索できないとかないですよね?)私なんてよく同僚と来年、再来年の暦を見て「旅行できる、できない」の話をしているので、ビックリしました。

 旅行というと昨年のインドは個人的に失敗だったとつくづく思います。なんの目的もなく、行けばなにか感じるものがあるだろうとか、行けばなにか見つかるだろうという気持ちで向かってしまい、案の定というか、ひたすら苦しい旅でした。一人だったというのも、普段は別に構わないのですがあのときばかりは誰かいてくれと心底願いました。「ぶらり旅」が向いていないことは国内にいてもわかることなのに……。目的もなく行動するのは自分の気性にまったく合っていませんでした。

 今度の旅行先は国内で考えていて、過去行ったことがある場所ですが、そのときはなかった強い目的があって行くものですから、まったく別の経験になるでしょう。インドもまた目的を持って向かいたいものです。それでもしかし、北インドは勘弁です……。

 

 機内食シリーズ。行きは偏頭痛がひどく、ホテルについたあと全部吐きました。もったいなすぎる。

 帰り。

 フマユーン廟。インドでは世界遺産をいくつか観に行きましたが、アンコールワットを超える感動はありませんでした。知らないインド人一家から一緒に写真を、とねだられる。おそらく韓国人と間違われたんだと思います。ここでもKポップはかなり人気のようです。駅でもキラキラ目を輝かせた小さな女の子から「韓国人?」と聞かれました。残念ながらジャパーニーです。

 イサ・カーン廟。カメラを構えたインド人男性に執拗に追われ、すぐに出ました。入場料金、外国人価格で高かったのに……。このプライバシー意識のなさにはインドにいるあいだずっと悩まされました。外国人で、女一人だからというのは十分理由としてあると思います。

 パーアーナキーラ。入り口がわからずうろついていたら老婆近寄ってきて、突然胸元にインドの国旗を縫い付けられたところ、それを別のインド人男性二人が助けてくれました。あれは押し売りだから気を付けて、と。入り口の場所も教えてくれました。大変なことのほうが多かったですが、助けてもらえた記憶もあります。

 アーグラへ向かおうとしたところ、列車が二時間遅れる。列車のチケットは何をどう頑張ってもインド鉄道のサイトで購入できなかったので、12GOというタイの代理店を経由しました。手数料はかかりますが、人のごった返す窓口で、ぼったくり価格で買うよりマシです。

 詐欺に注意!と聞きましたが、ここでは遭わず。ホームは物乞いが多かったです。ある下半身不随の物乞いはスケートボードに乗って移動していて、これは誰かに連れてこられたのだろうという感じでした。多分、お金を渡しても彼らの生活費にはならないでしょう。

 列車では、となりに座ったインド人女性が、ひとりの私を心配して色々手助けしてくれました。とてもありがたかったです。

 タージマハルは霧でなにも見えなかったので、代わりにメフタブ・バック。裏手にヤムナー川が流れていて、アラーハーバードでガンジス川に合流する。今回ワラナシへは行きませんでしたが、この時点でかなりしんどくなっていたので、相当な理由がない限り今後も行くことはないかもしれません。

 ヤムナー川。タージマハルの帰り、葬列がありました。ここに遺体が流されたのかなあ。汚染が酷いのでやはり沐浴は厳禁です。

 赤と白のアーグラ城。タージマハルより持ち物検査はずさんでした。タージマハルが厳しすぎ? あれは大変でした。

 このあとまんまと詐欺に遭い、返金を求めて店に乗り込み。1時間居座って全額返してもらい即デリーへ脱出。詳細は伏せますが、やはりインドで日本語が話せるインド人に心を許してはいけません(国外なら良いです)。しかし、そのときも身体的な危険はなく、インド旅行中、よく聞かれるような性犯罪にはいっさい遭いませんでした。知らない人についていかないとか、深夜に出歩かないとか、路地裏を歩かないとか、当然のことを守れば旅できる国だと思います。

 ところでカースト制は、噂に違わず2023年でも燻っていました。日本にいてもそれに起因した重大犯罪は度々聞こえてきますから、おそらく日常的に発生しているでしょう。列車の中でインドの新聞を読んだところ、強姦事件の記事がありました。ダリット女性は今でもとりわけ苦しい存在です。少し滞在しただけでも、見た目で「このインド人はどんな立場か」がわかるので(バンカーだろう、大学生だろう、リキシャドライバーだろう、物乞いだろう……)、身を守るのはかなり難しいと感じました。

 

 このあとも色々見て回りましたが、あまり印象に残らず。旅で得たものがあったのかなかったのか、よくわかりません。インドの観光ビザは5年分取ってあるので、もしかしたらその間また行くかもしれません。そのときもっと良い方向へ、暮らしが変わっていると良いのですが……。